ハリソン・フォードとトム・クルーズはその役のイメージにかなりしっくりとくるだろう。事実、この二人も監督の短い主役候補リストに載っていた。でもこの3大スターのうちオーストラリア人だけがこの役に関しては、アクションヒーロー的要素をより引っ込めて、ずっと「人間」を前面に押し出す事が必要だと強く提案していた。メルの手にかかってこの傲慢な億万長者が流れをひっくり返すと同時に、その息子の命にはさらにリスクが増え、両親の苦悩と悲痛もそれに伴い目に見えて増していくという大筋に磨きがかかった。
「実際メルって人には惚れ惚れさせられてるの」 Lethal Weapon 3でも共演したレネ・ルッソの証言。 「彼を観察する時間がたっぷりあったわ。メルの中には、もし彼のそばにいるならごく自然に気にかけてあげたくなるような何かがある。とてもセンシティヴな人よ。そこに何か悲しみのようなものが宿っているように感じるの。でも彼ったら同時に凄いユーモアがあって底抜けに楽しい人でもあるのよ、ね!?」
ん? 聞こえた? 何、あの音は? また聞こえる。どこだ? それはまさに底抜けに明るい人であるメル・ギブソンの体内から発してるのだ。ゲップ。ルッソはたまらずクスクス笑う。
「彼って撮影前いつもアレをするのよ。物凄く大きいやつ。そのシーンがドラマチックだろうが、お涙頂戴だろうが関係なくいつでもよ。で私たち、せーのって演っちゃうんだから! まるで15かそこらのガキみたいでしょ。ゲップの音なんてゾっとしないけど、それが何? それがメルの体の中から出て来たもんなら私は全く気にならない!」
あるいは他の誰にとっても、その笑いっぷりやおふざけはどんなに下品だろうと大いにありがたがられるのだ。というのも、ある時点までプロジェクトは順調だったのがメル曰く;
「スケジュール地獄にはまっていったのさ。僕の盲腸の事がなかったとしても問題は天気だった....」
そしてたとえ吹雪がおさまっても、ゴールデン・グローブや来るべきアカデミー賞という嵐が控えていたのだから。この2つとも、必要な宣伝のためにそろそろお呼びがかかって来ようという時だったのである。こういう騒ぎに加えて避けられない事実があった。メルの作ったBraveheartとロン・ハワードのApollo13 は、これはもうはっきりとライバルだった。
でも誰が競い合うッての? 本人達がここで競ってもしょうがないものね。
オスカー候補発表の直前、メルはハワードとその長年の製作パートナーであるブライアン・グレイザーに贈り物をする。セット中が野次馬になって2人が同じプレゼントをあけるのを見守った:フレームに入った大きなポスター。Braveheartの1シーン。戦場で52人のスコッツどもが尻をむき出しにしているあのショット。他では決して見られないようなオスカー宣伝キャンペーンのパロディ版だ。この豊かな遊び心に溢れた卑猥なコピーを誰が考えたかは、聞くも愚かである。ちょっと時間を割いて解読してみて!
(carinyaより.....このコピーはぜひ読んで笑って! 画像をクリックすると別ぺージに書いてあります)::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
数日後、BraveheartとApollo13 は合わせて19個もの候補に挙げられていた。予測されてたメルの監督賞も含めて。しかしセットに戻ってみると、たった一つの重要なノミネートが欠けているために心からのどんちゃん騒ぎには至らない....つまりハワードの監督賞。
「なぜロンが候補に挙げられなかったのか全くわからない」と一人の監督としてもう一人の気持ちを察して言う。
「Apollo13 の他の候補全てが、ロンの素晴らしい仕事の賜物なのに」
ハワードはひとり静かに居間のセットの真ん中に座っている。努めて明るくふるまおうとしながら。吹雪がまた強くなったためこの日は撮影を中止していた。「候補の事とは関係なく、僕は個人的な満足はじゅうぶん得たよ」とハワード。下を向く。
「以前 Unforgiven[許されざる者]を見てクリント・イーストウッドに電話したんだ。いったいどうやってThe Rookieを作ってすぐ次の年にUnforgivenを作ったのか知りたくて。彼にこう聞いた。"この映画を作るのにずいぶん苦労したでしょう?" 彼はこう言った。"いや。いい素材といい配役に恵まれて、外に出て撮っただけだよ" 僕の頭の中で何かがカチッとはまった。あまりにその事を意識して追求すると、芸術的にも感情的にもいずれ行き止まりになるって事を悟り始めたんだ」
「そうは言っても候補にもれた事は正直言ってがっくりさ。初めての候補でその栄誉が自分の物になる事だってあり得るんだからね」その夜がやって来て、メルが最優秀監督賞に輝いたばかりでなく作品賞もさらってライバルを打負かした。
「落ち込んじゃったよ」とグレイザーが振り返る。「プロデューサーとして言わせてもらうなら、オスカーは獲れなかった、ふん、それがどうした。けどこれは正直じゃない。レースに参加してもう少しで勝ちそうだったと思ってるからね」
メルは2つのオスカー像を別々にアルマーニのシューズバッグに納め--「こうすればぶつかりあってうるさい音をたてないから」--妻のロビン、6人の子供達と共に家に送った。
メルはニューヨークに戻って来た時、次のように記されたグレイザーのメモを見つけた:
「もし僕がオスカーを取りそこなった場合それは君の物さ、なんて言ったけど、あれは嘘だったのに。 愛を込めて、ブライアン」
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