Carinya's Column : On Mel Gibson's D.U.I. and the Rant
メル・ギブソンの飲酒運転と発言に関して

(掲載画像はすべてABCの"Good Morning America"より)
04.jpg彼には若い時から長らく付きまとっているアルコール依存症という問題があるのは確かだ。今までにもそれが原因でへまをしてマスコミのかっこうの餌食となったことが何度かある。その度に弁護士が奔走しダメージを修復しセラピーを受け克服したかのようになるのだが。彼も人間。ついついやってしまうんだろうね。それを言い表わして本人いわく;自分の中にふだんは潜んでいるデーモンがコントロールを握ってしまう....。

今回は遡れば2004年公開のあの「パッション」をめぐるストレスに起因している。つまりあの当時、映画の真意が理解されずユダヤ人団体をはじめ多くのジャーナリストから、反ユダヤ的な作品という批判を受け、彼から見れば理不尽な経験をしたことが彼の中に負のわだかまりを残してしまう。彼にとっては映画の世界的大ヒットや、それがもたらした名声や利益は結果的にアルコールに走るのを止めることにはならなかったようだ。

それでも去年新作Apocalyptoの製作にエンジンがかかり始めると、しばらくは遠ざかっていたようだが今年の5月頃から撮影地メキシコで、天候不順による撮影の遅れや、集中力の使い過ぎによるアドレナリン疲労、睡眠不足、あらゆることをやってしまう性向がもたらす肉体的精神的疲労、過大なストレスがたまり出した時、またもやデーモンが彼の人格を乗っ取り、テキーラなどの地酒の誘惑に負けた。

飲酒/スピード違反で7月28日深夜の逮捕時に口走った反ユダヤ的といわれる発言「ユダヤ人は世界のすべての戦争に責任がある...」のおおもとはメルの中にあった潜在的反発がもたらしたものといえる。それと直接的には今夏中東でぼっ発していた、レバノンのヒズボラ対イスラエルの激しい衝突において、またもやイスラエル空軍によるなかば無差別的空爆 -- 無実の市民、特に多くの子供達が犠牲になった -- に嫌悪感と怒りを持ったということも。怒りが燻っている時アルコールを摂取すると....。07.jpg

彼は酔ってなぜそんなことを言ったのかわからないとしながらも、ユダヤ人にすべての戦争責任があるとは決して信じてないし、自分は以前もこれからも反ユダヤ主義者ではないと改めて主張し、飲酒運転と酔っていたとはいえそういう発言をしたことで多くの人を傷つけ不快にさせたことを深く恥じ、おおやけに謝罪した。


公式謝罪声明 その1その2(こちらは特にユダヤ人に向けて)

なおメルは司法取り引きに応じ、結果禁固刑は免れたが罰金の支払い、3ヶ月の運転禁止、向こう3年間保護観察付きで定期的な断酒リハビリ・プログラムを受けること、また飲酒運転の危険性を訴えるフィルムをボランティアで製作することなどを言い渡され意義なしで受け入れた。

以上は本人が10/12と13日、2回に渡ってオンエアされた逮捕後初めての公的な顔見せになるABCの朝のニュース番組"Good Morning America”(GMA)に出て発言した内容や彼のパブリシストが発表した内容からまとめた。

関連サイト
Mel Gibson Says He Feels 'Powerless Over Everythin'(GMAインタビュー概要 part 1)
Mel Gibson Addresses Accusations of Anti-Semitism (同 part 2)
GMAインタビューのビデオ(Quicktime) Part 1  / Part 2

謝罪とメルの弁明はおおむね受け入れられ、メルを擁護するコメントを出した有名人は数えきれないほどいるが、一部ユダヤ系ジャーナリストや俳優、監督、エージェントたちは充分でないとし、彼と仕事をしないと宣言している。特に大手エージェントEndevorのAriel Emmanuel氏は、メルをボイコットするよう業界に呼び掛け、彼のクライアントたちにメルからオファーがあっても断るという強い声明をインターネットで発表。
ただしおおかたのハリウッドの重役達はこのことに関して冷静で、おおやけに発言するのを控えているし、Emmanuel氏の声明に対して行き過ぎをいさめるコメントも出された。世論調査や各メディアが行なったアンケート結果では過半数がメルを許すと出ている。

Letter To Ariel Emmanuel(やはりエージェントであるGavin De Becker氏が発表した反対声明)

ここでApocalyptoを配給するディズニーの動向が注目されたが、これは会長の「メルの今回の出来事および彼の個人生活と彼の作ったアートは切り離すべし」という一言で問題なく変更なしということでおさまった。ただしメルの製作会社Iconが製作、ディズニー系列のABCで放映予定だったホロコーストもののTVミニシリーズは棚上げされた。企画はおそらく他の局が買うだろうとされている。


さて、もし私がメルに直接言えるんだったらひとこと(よりちょっと多いが)だけこう言いたい。
世間の議題はおいといて、いろんな背景事実から反ユダヤ主義者だとは全然思ってないが、いくら強いからといって酒を飲んで時速150キロも出して海岸道路をドライブなんぞ二度としないようデーモンをてなずけるべき。そっちの方がぞっとする。当分の間は、名前の前にここのところ定着したactor-director-producerという冠詞と共に、ungracedとか、はっきりとanti-semiticとか、ごていねいなものになると「マリブで飲酒運転の挙げ句、捕まって暴言を吐い05.jpgた云々...」という長ったらしい不名誉な冠詞付きで書かれるだろうが罰だと思えばいい。本人も自覚している。誰かをあるいは自分自身を損なう前に捕まってよかった...。

再びさて....ちょっとした後日談。私は最初からこれらの事実、つまりいやに具体的に逮捕時の言動が世間に知られ渡ったことがちょっと妙だと思った。
そう、普通ならこんなことこんなにくわしく 公にならない。警察の詳細報告書は表に出ないから。悪質な公務執行妨害とか逃走したならともかく暴言それ事体は犯罪行為じゃない。あくまでメルの犯した罪は飲酒運転とスピード違反。だからLA郡の保安官事務所は公にはこれしか発表してない。交通法に違反する何キロオーバーという数字とアルコール検査の結果だけ。司法取り引きも当然この二つだけに関して討議された。

実はメルを捕まえた保安官補の書いたレポートの内容が、日を空けず有名なゴシップサイトtmz.comに流れた(売られた?)結果だ。まさしくインターネット時代。

そのサイトの主宰はかなりつっこんだスクープをものにすることで有名なゴシップハンターで、ユダヤ系のHarvey Levin氏。いわく「自分が手に入れたのは全部じゃなく半分で、残りの半分にもっとメルがひどいことを言ったりしたりしたかもしれない報告があった可能性がある。情報源は死んでも明かさない、報道の自由だ。保安官事務所のシェリフはメルと懇意なので彼に甘いんだろう。いや、それをいうなら土地柄、ハリウッドのセレブが違反をしてもいつも甘い。もし現場でのビデオがあるなら公開すべきだ...」といやに鼻息が荒い。きっとセレブが嫌いなんだろう。ましてや今回のターゲットはあのメル・ギブソン。黙っておくのはさぞや難しかったろうとは察する。

ま、それはいいとして、保安官事務所は本来出てはいけないオフィシャルなレポートが流出したことに懸念を示し、メルを逮捕しそのレポートを書いたとされる保安官補の自宅を家宅捜査した。場合によっては処罰もあり得るとのことだ。

当の保安官補は実はユダヤ系の人なんだが(メルも後で知った)、事件直後にこう述べている。
「ギブソン氏が言ったことはそりゃ愉快なことじゃないが、酔っぱらうと人はもっとひどいことを言うからね。気にしてないしそのことを深刻に受け取ってはいない。
逮捕したことでギブソン氏の評判にダメージを与えたことを気の毒に思うが、決して彼のキャリアをだいなしにしたくないし、貶めたり傷つけたくない。彼を捕まえたことを自慢するつもりも全くない。規則に沿った仕事をしたまでだ。これを機にこのことを重く受け止めて飲む前に、もし飲んでしまったら車の前でよくよく考えてほしい。二度と起こさないことを望んでいる」保安官補だけじゃない、私を含め多くの人がそう望んでいるのは確かだ。

まあこのレポートがネットに出なければメルはこれほど騒がれずに済んだだろうが、本人もいみじくも言ってるように、彼のおろかな言動がインターネット上で世界中の衆目にさらされたことは何かの啓示なんだろう。多くの人に不愉快な思いをさせ、心配させ、迷惑をかけたが彼自身にとってはむしろお灸をすえられたという意味でよかったのかもしれない。メルは後日、保安官事務所にも謝罪を申し入れている。14.jpg


さらに後日談 --このメル騒動のいい影響 --やはり長年アルコールの誘惑と戦っていて最近また深酒が再発したロビン・ウィリアムズがこう告白:「メルのおかげで僕もリハビリセンターに行くことをまじめに決心したよ。ありがとう、メル!」だって(^^;)

おまけにさらに、これがきっかけでメルの知られざるエピソードも明かされた。
ドラッグ常用で何かと問題を起こしていたコートニー・ラヴの証言はちょっといい話。彼女をドラッグ地獄から救ったのはなんとメルなのだ。彼女によると、たまたま同じホテルにメルがいて、彼女のひどい状態を知っていた彼はどうにかしてリハビリに戻そうと彼女を説得しに訪れたんだけど、ラリッてたコートニーは拒否し部屋から出ようとしない。でもメルは忍耐強くルームサービスが来てドアが開くまで待っていた。中に入った彼は優しく、でも強くさとして結果、彼女はリハビリセンターに戻ったんだって。それが一年半前。それ以来メルを尊敬し大好きになって今回の事を知って、ぜひ言わなくてはと思い人気トークショウでさっそくお披露目した。どれくらいの人が私と同じように彼に救われたか知ったら驚くわよ、とも。
他人にはこうなのに....自分の事もおなじくらい大事にしてと思う。コートニーもそういう思いを込めてあえて明かしたと信じている。


最後に....全くお騒がせメルだが、インタビューを伝えた文中の以下の一節が私を明るくさせる。
He adds that he plans to continue making movies and working to heal himself and those he offended.
"All you can do is take another step, keep breathing," he says.

それと...全く私的な見解だが、メルの中に、いや古今東西、天才とか芸術家とかアーティストとかいわれる人物の精神にはデーモンが潜んでいない方がおかしいというのが私の意見。じゃなきゃただの退屈な芸ノウ人。
彼がスクリーンの中で走りまくったり愛嬌を振りまいて若いころからうすうす、時には濃厚にそれを感じていた。ずっと気にしていた。惹きつけられる大きな理由のひとつ。ただうまくコントロールしていい作品を生み出す栄養源にして欲しいね!というのが凡人であるが彼のことを、見守るべき一人の偉大なアーティストとみなしている私の願い。驚かせてよ、メル。でも今回のニュースみたいなのは勘弁して(^^)。

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