MAD MAC
Premiere(France) 1995-10
By: Jean-Yves Katelan
1995年9月Braveheartの、最初のヨーロッパ・プレミアが開かれたスコットランドのエジンバラで取材されたレポートとインタビュー。とても機嫌が良さそうなメル。映画狂で本の虫である一面も垣間見える。
メル・コラムキル・ジェラード・ギブソンは明日にでもスコットランドの王になるだろう。たとえ彼がニューヨーク州生まれのアメリカ人で、のちにオーストラリアに移住した身の上であろうとも。メルは監督2作目で民族の英雄、スコットランド人ウォレスのヒロイックな冒険を、とてもロマンチックな恋を、凄く陰惨で大仕掛けな戦いを語りそして演じている......その辺の事は知らない? もっともだ。1297年の頃の話なんだから。でもスコットランドの人たちの心の中には、いまだに根強くウォレスの思い出が宿っているのだ。
だからメルがキルトを着てプレミアに現れた時、それはそれは凄い熱狂ぶりを示したのである。そして女の子たちの絶叫。MEE-EE-EELLL!!! この島国で今時こんなに女性たちが泣き騒いだ所ってあったっけ。
メル/ウォレスがスコットランド人の毛並みを優しく念入りに撫でてるのに対して、イングランドのそれをいつも逆立ててるのは確かである。映画でそれがよくわかる。なぜならイングランド人は先祖代々の宿敵なのだから!
ところで彼のここにおける人気はストーリーだけに負うものじゃない。あのダラダラとした「トゥルーナイト」で、いやにアメリカ風のランスロットを演じてたリチャード・ギアとの違いともいえるもの:青年時代をオーストラリアで過ごしたせいなのか、メルはスクリーン上では全くのスコットランド人なのだ。そして彼の「平民」としての無造作な愛想の良さを前面に押し出した振る舞いは、ここの人々に強い共感をもたらしている。彼らのシンボルは結局のところあざみの花じゃないんだ?
素朴さに溢れた「公式」試写会の会場では、そんなメルの気取りなさが伝染してか「喫煙」の要求が出され許可された。そして男性の半数はキルトと蝶タイをつけ、昔ながらに幅ひろの短剣を左のソックスに挿しているのがしばし見受けられた。市内の公立の学校のホールを利用したその会場自体が中世の教会の趣を今に留めていて、カンヌのパレスなんかよりずっといい雰囲気だ。
さて試写会では、まさにみんなが固唾を飲んでいる戦闘シーンの真っ最中に、どういうわけか映写が中断された。いったん灯りがともされたその部屋の真ん中で、メルはちょっとしたジグを踊り出す。客たちが大声で笑いふざけながら映写技師をこう罵っている間、彼はみんなと踊り続けた。「やつはきっとイングランド人に違いない、やっつけちまえ!」
メルはしかし、事故などのトラブルでこの大プロジェクトが失敗することだってあり得たのだ。
彼の会社の製作でもあるこの映画は凄いリスクを含んでた。7000万ドルの予算、1年に渡る拘束、体力を消耗させる5ヶ月の撮影。そして中世の城や村や、いくつもの戦闘シーンの再現。とどめは毎日たった3時間ぽっちの睡眠.....これら全てがクリアできなかったかもしれないのだ。たとえこの作品がアメリカで既に6000万ドル稼ぎ出しているにしても、メルは引き続き大博打のまっただ中にいる.......
彼はスクリーン上ではいとも簡単に我々を - 特に女性を - 魅了し誘惑する。だからといってそれを真に受けてはいないだろう。つまりこういうことだ;この善良で敬けんなキリスト教徒で結婚15年目、6人の子供の父親でもある彼に関してはそのルックス以外は何も問題ないということを我々は知っている! あの外見だけは見るものを幻惑せずにはいられないことも知っている。
彼はどちらかというと小声で話し、声も低音だ。時に予期しない茶目なことを言ったりやったりし、時に人をおちょくってる時、ニヤニヤ笑いを忘れたりする.....。
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PREMIERE: この映画では相当なリスク、つまり乗るか反るかの大博打を打ったんじゃない?
MEL: 大博打? へっへっ。いいや、ちゃんと元はとったよ。でもものすごい金を取り扱ったことは確かだ。一歩間違えばにっちもさっちも行かないことだってあり得た。
とは言っってもゾッとしないことは考えないようにしてたよ。誰が好んでそう思う?
P: アメリカでの観客動員数には満足した?
M: この春に封切られた時、同時に他にも大作が何本かスタートした中ではかなり上手くやったね。しかもアメリカでは再上映も配給元がやってくれてる。これはスタジオがこの作品を信頼してくれてることを示す。かなり珍しいことなんだ。 だって全て収益第一の世界だからね。アメリカじゃ再上映を決定するためには約1000館からの上がりが確実に見込まれると言う計算の上だ。そういう意味で反対に、見切りをつけるのも素早い.......
P: ドーヴィル(のアメリカ映画祭)には出品しなかったね。これはアメリカ映画じゃない?
M: これは本当はヨーロッパ映画だと思ってる。チームはほとんどイギリス人だし、ロンドンシンフォニーが音楽をやってるし、撮影は全部スコットランドとアイルランドでやったからね。
P: だからベネチアで上映された時は、映画祭の常連達の気を幾分かは晴らすことができたわけだ.....
M: ハハハ!うんそうだね。そういうお祭り騒ぎがいっぱいあっておかげでくたくたに疲れる。
P: イングランドとスコットランドの間に戦争を引き起こしたことに不安は?
M: (思わず吹き出す) No!
P: お世辞にもイングランド人てのは表向きはともかく腹の中は気のいい連中とは言えないが....
M: (笑)たぶんね。でも彼らは聡明だ;大事なのは映画を作ることだというのをよく理解してると思う。人はそれぞれ長所と短所があるんだから、どこかで折り合う必要が生まれてくる。だからイングランド人だから何々...と特にこだわって作業を進めたわけじゃない。だいたいそれを言うならスコットランド貴族だって二枚舌じゃけっこう負けちゃいないよ。
イングランド、スコットランドという分け方よりもそれ以上に亀裂は権力側と民衆の間にある....。
P: 自分が何かの「階級闘争」と関係があると考えたことは?
M: 一度もそういう厳格な社会構造は経験してない。アメリカやオーストラリアにそういう階級区別が全くないとは思わないよ。知ってのとおりこの2つの国は主にある一つの階級制度によって発展して来たんだから。でもそれらはヨーロッパの伝統的で厳しいそれとは違う。
P: オーストラリアに住むアメリカ人である君が、13世紀のスコットランドの何を気にいったんだろう?
M: 初めはただ単にあっさりとシナリオを渡されたんだ。たちまち気をそそられた...あの国そのものをよく表してると思った....その住民の直情径行的な気質もね。彼らは厳しい風土のもと、かなり辛い生活を強いられていた。荒っぽい土地柄、粗野な男達!控えめということを知らず、あけすけにものを言う。つまり見たことを正直に言っておべっかなんか使わない...そういうものがすべて気に入った。
P: この作品にはラグビーの試合の雰囲気がある.....
M: ラグビーは良く知ってるけど質問の意味がよくわからない.....
P: つまりシンプルだということだが。よくある多義性とかあいまいさがない.....
M: ああそうか。そうだね。敢えて時間を無駄にするつもりなら曖昧さや多義性を駆使すればいくらでも複雑な筋になる....僕にとって理想的なのは台詞のない場面が一切ないものを作ること!
しかし実際にはやむを得ずそうはならない......サイレント映画の中にすら、見せかけの場面がある.....つまり台詞のない部分があるということだ。
P: 「王妃マルゴ」は見た?「ブレイブハート」はある意味でまさにあれと対極をなしているように見えるけど....
M: うん見たよ。好きな映画だね。たとえ僕のと違いがあっても。実は飛行機の中で見たんだ。
P: 良く眠れた?
M: ひっひっ....まっくらだったからね。だろ?(笑)
P: さて戦場のシーンだけど、かなり迫力があっていや驚いた。最終的に何人の" 戦士 "が病院行きに?
M: まず何をおいても不幸な事故が起きるのを避けたかった。賭けられたものがどんなものであろうと、どんなに真に迫ろうと、そうしなければ映画は成り立たない。
ところで戦闘シーンについてだが、それに関する些細な噂はたぶんでっちあげの報道が元さ。僕を信じてもらいたい。事故を起こさぬためにかなりハードな日々をたっぷり味わった.....結果的に誰も傷つかなかったよ。人も馬も......
実はもし....それが最悪と言えるなら一人くるぶしをくじいたんだ。でもすぐその場で担架で運ばれて手当てを受けた。彼は笑ってたよ;ちょうど今頃、軍から保障を受けとるところで、復帰するまでの6ヵ月間、まるまる南フランスで本を読んで過ごすんだって!
P: 1700人にもおよぶエキストラはアイルランド軍が全面的に協力したんだってね。
M: そう。だからくだんの彼はすぐに保障されたわけさ。それに何もしなくても手当てが支払われることにすごく喜んでいる! そうはいっても僕自身はけがもせず万事上手くいったが、くるぶしをくじいたのは気の毒だった.....あの場面は万全の準備を整えた上で演じ、撮った。突き詰めていえば1カットごとに皆で集まってはさらに練って、特徴ある戦闘のショットをつくり出すために、持てる感性の全てを絞り出し合った。
と同時に見る人が信用でき、理解もされやすいものをね。そうやって次には各々の人物の動きをフォローしなくてはいけない。文字どおり一種の手引書みたいなもの - かなり細かいところまでかいてあるんだが - をしょっちゅう引っぱり出しては、それに沿ってさらに戦場全体の動きを監視する......
P: それはたとえば「君の分担の敵はこいつだよ」という具合に各々に割り当てているようなもの?
M: 馬が絡むシーンと横に隊列を組んだ戦士達の集団がぶつかるところが一番厄介だった。一対一で戦い合う肉弾戦の動きについては比較的楽だったよ。戦闘用に考えたちょっとした上手いシステムを応用し、各々の動きを調整するのに2日もあれば十分だったね; それぞれ自分のものである敵役を割り当てて、必要に応じて何度も繰り返し撮影した。結果は首尾よくいったよ。戦場の至る所で何かが起こっていて、それは決して見せかけの印象を与えるものじゃないほど真に迫ってた.....まさしく戦場だった。
P: 馬が絡むシーンって言ったけど、かなりトリックを使った?
M: フィルムの回転速度を変える方法をかなり使った。でもそれは戦闘シーンだけでなく映画のあらゆる場面で応用したけど。通常のシーン撮影には(よく使われる24コマじゃなく)28コマ/秒のノーマルな速度でやった。そのスピードを拡散していっていわゆるスローモーションのちょっとした効果を狙ったりもしている; でもこの場合はほんとにわずかでほとんど気付かない。1秒に4コマ増えると言うことはつまり経過していく1秒ごとに6分の1秒余分に動きが写るということになる......
P: ソフィー・マルソーの名が君のと同じ大きさで宣伝されてたけど理由は?
M: (笑)僕は知らないよ。その類いの事には決して関わらないんだ。なんていうか、その手の事には全く無頓着って言うのかな。決めるのはきっと宣伝部門の人間だろう.....
P: その広告がフランスとヨーロッパ各国だけのものなのか、たぶん知ってると思うんだが.....
M: いや。特別な意図はないんじゃ....(ここでプレス担当の女性に助けを求める)アン、助けて!それって何なの?......
.そうか、オーケイ、ヨーロッパ向けだってさ。
P: それと....最後に映画に出たのが10年前だと言うパトリック・マッグーハンを起用したのは?
M: 実は彼の名を初め提案したのは、TVの「プリゾナーNo 6」で彼と一緒に働いたことのある僕の第1アシスタントのデヴィッド・トンブリンなんだ。そのアイデアは使えると思った。それ以後あの役に他の誰も思い付かないくらいだったんだから; それ以前に考えてたエドワード役の候補者のほとんど全員が演技過剰か不足のどっちってところだったからね。彼は完璧と言っていい視点を見つけてくれた......彼はごく自然にこの世界からちょっぴり身を引いてるんだと思ってる。動き出すのを留保してるんだ。今の映画界は彼にとって余り魅力的じゃないんだろうね......でも彼に会った時、僕には彼が早く撮影に入りたくてうずうずしてるのがわかったよ! この役がすごく気に入ったと信じてる。たとえそれが意地悪く残酷な王の役でもね。
P: これ以前に創作欲を掻き立てられるような何か偉大な作品というのに出逢ったことがある?
M: 子供の頃からたくさんの映画を見て来た。そりゃすごく熱心な観客だったよ。そしてずいぶん長い間結局ずっとずっと決して出会えなかった「その」映画に会えるまで待ってたようなもんさ。ランドール・ウオレスの脚本を読んだ時すぐ感じたね、おそらくこれだって。すぐに頭の中でいつも見たい見たいと思ってたように映像化し始めていた! 僕の味わったこの思いをせめて見る人たちに知らしめる事ができたらと願ってる。
P: 子供の頃の夢を実現させたわけだね。今でもまだそういう情熱は残ってる?
M: 僕にとって「見たくても決してみたことのない」映画ってのが実はいくつもある。たとえその中のいくつかがすでに作られていても.....
P: たとえばどの映画?
M: 具体的に名前を挙げなくてもわかると思う。一時代を築いたある種の映画たちには、たくさんの制限というか遠慮が見られる。50年代に作られた特にロマンス物はまるできれいごとに終始し無害なスタイルに偏っていた。台詞も四角張ってて気取ってるし真実味にかけている。全部作りなおせたら! スペクタクル劇には興奮させられた。あれらに刺激されたのはいうまでもない......
P: ところでウィリアム・ウォレスとロビン・フッドはいとこの関係って言っていいのかな。どう思う?
M: ああ....そうかもしれない。民衆の側にいた男たち。本来持っていた力を権力とせず結局人のために捧げた....僕は例えばジョセフ・キャンベルの本に書かれてるような英雄たちの話が好きなんだ。(参考:「神話の力」「千の顔を持つ英雄」「時をこえる神話」すべて邦訳あり)それらにはとても興味深い事が書かれている:英雄たちの様々なモデルの相違点が解説されてて実に人々がまだ洞穴の中に住んでいた時代に、たき火を囲んで語られていただろう事にまで遡って検証されてるんだ。英雄たちには実際にはこれっていう型があるわけじゃない;ロビン・フッドはそれらの様々な型の一部を成してるし、ウォレスについていえばむしろチェ・ゲバラかイエス・キリストなどと同型として引用できるかも知れないよ! このタイプはもうほとんどコミュニストと言っていいね。いいか悪いかは別として。
P: キリストやゲバラは好みのタイプ?
M: 葉巻きは大好きって事は認める(笑)やれやれ、おまけに人生でたばこをやる事はいとも簡単ときてる.....
P: イエスはタバコなど喫ってなかったよね?
M: それについては喜んでそうだって言えるね。「肉体は聖堂である」って言うし。この類いの事はすべて.....わかる?
それにあの時代、中東にタバコがあったとは思わない。ちょっと信じがたいね。
P: 彼らはたぶん他の植物を育ててた.....
M: (笑)そう、そう、それだよ!でもそいつを吸ってたのかなぁ.....?
P: スコットランドの「厳しい生活」の話に戻ろうか。それについて何か個人的に研究とかした?
M: いいやそれほどでも。実はね、僕は厳しい生活より贅沢が好きなんだ!でもね.....そういう昔の厳しい人生や歴史等を描く事はすごく性に合ってる。なぜならそういう厳しい条件から学べるものは何かって事を考えるとね、現代人って一体なんだろうとしばしば思うよ。よく人は「我々現代人は〜」って言葉を多用するだろ。
うんざりだね。全く冗談かと思うよ。13世紀の男たちだって僕らと同じくらい現代人だったのさ! 知性においても劣っていたわけじゃない。僕たちは単に昔よりたくさんの道具やおもちゃを持っただけさ......
P: でもそれと共に教育や知識もだろ?
M: うん。ついでに情報もいっぱい.......!■
Original text (c) Premiere, France 1995
最下段写真提供:Blaithin in Eire for sharing the pic, thanks!
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