「失礼します。あなたにお祝いをさしあげたいのですが」
大皿に盛られたパイナップルやオレンジのスライス、シャーベット、生ハムのロールがテーブルの真ん中に置かれた。これら全てがつい10分ほど前にデザートを辞退したメルに献じられた。これだけじゃない。両手を重ねてウエイターが告げる。
「ブルーノとそのファミリーはシャンペンをあけてこの度の受賞をお祝したいと言うことです。おめでとうございます」「ありがとう。君たちにこそ祝福を。でも僕はアルコールは飲らないんだ」「どんな時でも?」シャンペンのワイヤをほどきながらウエイターが尋ねる。
「これはルールなんだ」メルは強調する。ウエイターは150ドルのドムペリニョン1988のコルクを勢いよく飛ばす。
「では乾杯だけでも。あなたの今までとこれからの作品に」メルは愛想よく、しかしやや緊張してるようだ。
「うん、乾杯は受ける。でも飲むのは遠慮するよ」細長いシャンペングラスに注ぎ分けながら、ウエイターは感心してこう言う。「あなたはメガクラスの大スターなのに、全然それらしくふるまわない。おわかりですか?」
「ボディガードの軍団を引き連れていないことだろ」 熟したぶどうの芳香があたりを満たす。「ブルーノのファミリーがそこにいます」ウエイターが示した先に一家が微笑みを浮かべてこちらを見ていた。
ロパータは手を伸ばしレコーダーのスイッチを止める。ブルーノとその息子、夫人らは立ち上がり杯を挙げ、スターを祝福した。メルとロパータも立ってそれを受けお返しをする。メルは汚れたペリエのグラスを挙げて。
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ジョディー・フォスターの持論。
ハリウッドのハイフネイト(訳注:例えばIrish-Americanとかactor-directorというようなもの)の本当の天性は、その人物が演じる役柄からよりも、彼等が作る作品の中により見つけることができるというものだ。メルについて「彼の作品こそまさにそれよ。The Man Without A Face も Braveheart も、気をつけて見ると倫理観や寓意を表すのに、あちこちで伝統を打ち破る手法が取られてる」然り。さらに熱心な観客なら既に気付いてるはずだが、
マゾ的とも思えるほどのあの表現の強烈さ。初めての作品では彼には顔すらなかった。少なくともあの有名な顔はグロテスクなメイクの下に隠れてしまっていた。Braveheartでは腹を割かれ四肢をバラバラにされながら自由を、と叫ぶ。メルがそうしてまで伝えようとしてるのは一体何だろう?
「彼くらいの立場なら、日に24000回も誰かに言い寄られたり何かをとられそうになり、裏切られたり、食いものにされそうになってもおかしくない。ある特定の場所では彼はそういうものから切り離され守られてはいるけど。
彼は寛大で高潔で凄く魅力のある人だけど、そういうもののうち私がほんとに好きなのは、彼が他人に大して愛想よく気持ちのいい人だと言う事実にも関わらず、ハリウッド的な人づきあいを極力避けているという点なの」
でもそれはとりあえず今夜のここでの事ではない。そろそろお開きだ。メルはぼちぼち出口に向かい始めた。一人のバーマンが彼を呼び止めた。「ブルーノ達と一緒に写真を撮らせて下さい」「もちろん」オーケイ。皆が寄り添った。バシャ! 次はブルーノとメル。
バシャ! ナバホ族は写真を撮られると魂が盗まれると信じてる。バシャ! ブルーノ・ジュニアと。「どうかもう1枚だけ」とブルーノの奥さんが声高に頼んでいる。
「うんざりでしょうけどあなたがメル・ギブソンである限りこれだけは譲れないわ」この大スターはもちろんオーケイした。彼女はごく普通に彼と並んだ。(「彼は思ってたより小柄だった」そしてこう言うだろう。「でもあの青い眼はそんなことどうでもいいって思わせてしまう」)彼は神妙に微笑んでいる。そう、いかにもその顔はこう言ってる。「なぜ僕が?」■
Original text (c)Premiere1996
Photographer: Andrew Macpherson (pg.1, pg.4)
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