TO MEL & BACK
Premiere (US) December 1996

by Holly Millea


「身代金」撮影中のメルとのインタビュー、関係者のコメント、そしてインタビュアーの冷静な観察をとりまぜたテキストで純粋なインタビューとまた違った面白さ、行間や含蓄を読みといていくスリルがあり、ちょっとした短編小説みたいです
ただし訳したものがその限りではないかもしれないことには、御容赦を。
テーマは「歓び・憂鬱・困惑そして...」という感じでしょうか。

cover
ンタナの上空3万3000フィートのどこかでその痛みは始まった。ゆっくりと鈍い腸内の律動。座っている事もままならなくなり、彼は救いを求めようと通路のひじ掛けを掴みながらよろめき歩いた。まもなく腹の中全部がひっくり返っったような感じが始まった。食中毒? すぐにギャレーから1パイントのペプト・ビスモル液が与えられ、矢継ぎ早に3回ピンク色の不透明なシロップが飲み下された。ニューヨークの空港に車が手配される。たぶんホテルにドクターがいるはず。

何てこった、大渋滞。雪に覆われた道路は車また車。その時そこに居合せたドライバー達は後ろにいるセダンの中で体を折り曲げて苦しんでいるのが、待望のトロフィーを大喜びで掲げてたあのゴールデングローブ受賞者の大スターだとは知る由もない。排気ガスいっぱいの車外にでも出ない限り。

やっとホテルだ。ドクターはいない。彼の顔は今や真っ青で震えており、熱で燃えそうだった。これは食中毒なんかじゃない。
男二人が虚しくタクシーを探す。彼はロビーでじっと耐えて待っている。フロアマネージャーがぶらぶらしていて偉大なるスターとちょっとした会話を交わす。
外は寒いだろうね」「Yee-a-hhh...
返事はもうほとんどうめき声。震えを抑える事ができない。車を待っている一人の婦人がじっと見つめている。彼は彼女の心が読めた。(この人を知ってるわ。ふん、おおかたドラッグか何かやったんでしょ)ドラッグはおろかメル・ギブソンは酒さえ飲んでいないのだ。

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ようやく車を掴まえたとメルが続ける。
誰か別の人を拾いに来たんだがディーンが、病院に行ってくれとほとんど無理矢理に"要求"して乗っ取った」     

2週間後、かなりの低料金で借りたような専用トレイラーの中で、その運命の夜を振り返る。まるで補助金で賄われたようなトレイラー。 男の部屋そのものといった感じに散らかり、うす汚れどこもかしこもボロ。彼は椅子を少しでも綺麗にしようなんて事は提案しない代わりに、アップルパイを一緒に食べる事には大いに乗り気だ。大きくてギラギラの鋸歯型ナイフをフォーク代わりにして箱から直接パクつく。
アシスタントであるディーン・ロパータがどうにか座るスペースを見つける。小柄で浅黒くハンサムな30代のニューヨーカーはギブソン軍団のリーダーで腹心の友でもある。
新聞に広告を出したんだ。"アシスタント求む。ドラッグと街の女の子に詳しい事"二人で大笑い。
実際はロパータはギブソンのエージェントであるICM(ここのメール室からロパータはスタートしている)のエド・リマートの推薦があったのだ。以来3年間ロパータはこの俳優のことに関して全知全能の存在となっている。
(carinya's note....現在ロパータはメルの推薦でTVのプロデューサーに昇格し、ダグラス・ウィーヴァーが新しいアシスタントでメルが散らかしたものをせっせと片付けているそうだ)
しかし土曜の夜にニューヨークの病院の緊急棟を、指折りの大スターを支えながらうろつく羽目になるような、カオスと危機管理の経験までするとは予測がつかないもんだ。おろおろ。
やっとナースステーションまで来て叫んだ。"メル・ギブソンを連れて来た。とても痛がっている"
そうでしょうとも。いいから座って。素っ気ない反応。メルを前に引っ張り出す。彼女はそこに紛れもないあの青い目を見る。とたんにこう来る。サインを....!
個室に入れられ専門医が喚ばれた。もう上品にしてる場合じゃない。
身ぐるみ剥がされ、染料を注射され、CATにかけられたとメル。診断:急性盲腸炎。
24時間のうちにいまいましい虫垂とおさらばしたメルは報道陣が押し掛ける前にさっさと病院から脱走した。
あの伝統的な手術の痕はないんだと説明する。まだ少し痛みを感じるらしい。
そこらにある小さな穴ぼこっていえばいいかな。彼等はレパラスコープ(腹腔鏡)を使う。小さなカメラと細い棒を体内に突っ込むんだ
今、朝の10時。しゃべりながらもせっせとパイをたいらげる。新しい一切れにナイフを突き刺して嬉しそうに言う。ビデオテープを手に入れたばかりだ。僕の体内を中から撮影したやつさ

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カウフマン・アストリアスタジオの外。空は灰色で綿毛のような雪が仕切りにふっている。メルはトレイラーを出て通りを急いで渡り、裏口からRansomのセットに入った。
この映画ではヴァージン航空のリチャード・ブランソンのような起業家を演じる。
まさに本当の意味での富みの中で生きる男。金だけじゃなく美しい妻、愛すべき息子、発展する事業そしてたぶん政治的な野心も持ち合わせている。力と人生を楽しんでいるんだ
ゆえにその力を守るために進んでモラルを曲げ妥協もする。厄介なストを防ぐために組合のリーダーを抱き込みおとしめる事さえする。そしてある晴れた朝のセントラルパークで彼の10歳の息子が消える。
もし君が親なら人生最大の悪夢だ。おびえ、恐怖。自分が何なのか思い知らされる:ピリピリした神経の固まりが体内でのたうちまわり、ひどい精神的苦痛に襲われるが彼は最終的に意外な手に出る
何てことをする人物だろう、全く。渡すべき200万ドルの身代金をあろうことか腹立ち紛れに額を倍にして、誰でもいいから犯人を生死に関わらずさし出した者に懸賞金として与えると言い出す。FBI、警察そしてレネ・ルッソ演じる妻の思惑に反して。

メルはこの役にうってつけの哲学の持ち主だとロン・ハワード監督。
彼はかなりのインテグリティ(人格的に信頼できる素質)の持ち主なんだが、だからといって人の意見にハイそうですかと黙って従う人物じゃない。つまり全然イエスマンなんかじゃないんだ。もし僕が月並みな知識である一つの方向を彼に指示したとするね。そうすると彼は、僕がうんとまじめに別の方向を考えるはずだって強く信じるんだ。そういう男なんだ

完璧な配役だわMaverickで共演以来メルと仲良しであるジョディ・フォスターのことば。
いつでもメルはちょっと三枚目的なナイスガイを演じるのは自分の職分で天分でもあると承知している。でも全く別の面もあってこっちは常に怒りとか精神のダークな部分を合わせ持っている。それを表現するのはある種の快感よ。魅了される。それが彼の本質のより真実に近いものだと思う

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