09

11月

2009

南北戦争時の硬派なウエスタン「セラフィム・フオールズ」"Seraphim Falls"

「セラフィム・フォールズ」オリジナルポスター

「映画」カテゴリーにはメル・ギブソンに少しでも関わりのあるものだけに限らず主にみんなに勧めたい、あるいはお気に入り映画の感想や覚え書きを書いていくつもり。とりいそぎ他所に投稿したのを移転。あと旧サイトに書いた過去のものいくつかもここに移すつもり。

 

さてメル・ギブソンの製作会社Iconプロダクションズ2006年公開(日本未公開)のこの作品、大ヒットはならずともアメリカでのレビューが好評だったので公開を待ってたが、ようやく最近DVD化されたので借りて観た。「セラフィム・フオールズ」というのは地名だとずいぶん後でわかる。プロットは起承転結でいえばいきなり承から始まり、起の部分は追々明かされていくというものだ。だが始まりから緊迫感とハラハラが続き目が離せない。

冒頭ピアース・ブロスナン扮する元北軍の将校は我々にまだ明かされない理由でリアム・ニーソン扮する元南軍将校カーヴァー率いる追っ手に執拗に追われている。映画は全編がこの二人の過去の不幸な出来事に発する確執による追跡劇だ。元北軍将校ギデオンがナイフ一本で雪山から荒涼とした砂漠まで、追っ手をひとりまたひとりと倒しつつ生き延びるためのサバイバル術は見事だ。ただしアメリカではそのサバイバル術描写があまりにリアルという理由でR指定を受けた。

 

ここでトリヴィアをひとつ。ニーソン主演の1995年公開の「ロブ・ロイ」を見た人なら、もしかして思い出されるかもしれない。あれも追われる主人公が工夫を凝らして追っ手を撒くシーンがあったが、今回その一つをちゃっかり敵役ブロスナンがいただいている。もひとつ、公開年が同じなのでどっちが先だか知らないが、「アポカリプト」のあの究極のスタント場面のそっくりも(もちろん私が気がついたお節介に過ぎなく、製作側が知ってるかどうかは不明)

 

映画はほとんどをニューメキシコ州でたった45日で撮影したそうだ。この映画のほんとの主役は登場人物が雪山から平地、砂漠と移動することによって多彩な顔を見せるアメリカ西部の自然だと思うくらい実に厳しく雄大で美しい。台詞も少なく映像によって見せているから景色は雄弁だ。カメラがオスカー受賞者であの「ブレイブハート」も撮ったジョン・トールということで納得。もちろん二大アイリッシュ俳優も役柄にぴったり。特にブロスナンは見事にジェームズ・ボンドの殻を脱ぎ捨ててハマリ役。本人は喜んでこの汚れ役を引き受けたそうな。

 

硬派な、と形容したのはヘラヘラ、ニタニタした場面がまったくなく女性が絡まない意味で。もちろん女性は出てくるが最終シーンで、後からあれは砂漠の蜃気楼だったのかとも思える幻想的、妙なる女行商人としてキーパーソン的な役で出演するアンジェリカ・ヒューストンを除けば、説明的な役に終わっている。男ひとりのサバイバル行とそれを追う冷徹な男となったら軟派の出る隙はない。よってこの映画はデートムービーあるいはファミリー映画としては勧めない。特に子供はまだ見ない方がいい。

 

「逃亡者」とか「ランボー」とか「明日に向かって撃て」それについ最近の「アポカリプト」など思い浮かべたりしながら見てたが、特に太陽がぎらつく砂漠のシーンに移ってからはしきりに頭によぎったのは往年の名画「眼には眼を」だ。復讐というテーマのせいもあるが、人が自然に置かれた時の卑小さを両方ともうまく描いてると思うから。つまり壮絶なサバイバルを求められない日常では別段意識しない自然の恵みと脅威は、意識すると自分の卑小さを思い知るということだ。またIMDbのユーザーレビューには「既存の西部劇というジャンルを超えた知的なウエスタン。イーストウッドの "許されざる者"以来の傑作...」ともあり同意。

 

公式サイト(英語 Iconmovie.net内)

DVDリリース公式サイト(英語 Sony Pictures内 予告編あり)

 

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